夜鷹①
みにくい鳥
どこにでもある、ありふれた森があった。
その木陰の下を1羽のヨタカが散歩していた。
(お腹が空いたな。でも夕暮れにはまだ早いなあ)
そんなことを考えていると、ヨタカは草に足をひっかけつまづいてしまった。
「あ痛!」
うしろのほうで笑い声がした。
ヨタカが振り返ると、ムクトリとヒヨドリが笑い転げていた。
「アハハ・・・、なんて間抜けな姿だろう」
「姿が間抜けだと、転び方まで間抜けだな」
ヨタカは何も言わず再び歩き出す。
ムクドリたちは笑うのをやめて、ヨタカのあとを追う。
「おい待てよ。あいさつくらいしたらどうだ」
横柄にムクドリが言った。
「僕になにか用かい」
ヨタカが答えると、ムクドリたちはまたさっきと同じ笑みを浮かべ、ヨタカの前に回り込んだ。
「別に用なんてないさ。ただ君みたいなみにくい鳥が、よくこんな真っ昼間からうろつけるもんだと感心したもんでね」
「いや、もしかしたら恥ずかしいなんて、高等な感情がないのかも知れないね」
ヨタカが黙っていると、ムクドリたちはますます調子づいて続ける。
「大体君がどうしてヨタカなんて偉そうな名前をしているのか理解に苦しむよ」
「僕がタカだったら、こんなのと一緒にされるなんて我慢できないや。真っ先に食い殺しているよ!」
「君たちには関係ないだろう」
ヨタカが言い返すと、ムクドリたちから笑みが消え、
「関係ないとはなんだ!この鳥の面汚し!」
「お前なんて姿の見えない夜にだけうろついていればいいんだよ!」
と、大声でヨタカを罵りはじめた。
突如、上空で鋭い鳴き声がした。
驚いたムクドリたちが空を見上げると、背の高い木の枝に1羽の立派なタカの姿があった。猛禽類の証である何者をも引き裂く鋭いくちばしと爪、そして周囲を威圧するするどい眼を持ち、森の王者らしい風格が漂っていた。タカはヨタカらに気づいているのかいないのか、じっと遠くをみつめている。
ムクドリとツグミは喋ることも逃げ出すこともできず、ガタガタと震えていた。ヨタカのほうは同じ名前をもつタカの姿を、目を見開き瞬きもせずに見上げている。
タカは大きく翼を広げると、ゆっくりその場から飛び去っていった。
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