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キジも鳴かずば

懐かしいTVアニメのひとつ「まんが日本昔ばなし」。

ほのぼのした話、愉快な話に混じって、
怖い話、暗い話というのも少なくない。
しかし、そんな話のほうが記憶に残っていたりする。

「キジも鳴かずば」もそうした話のひとつ。

昔、犀川(石川県)のほとりに小さな村があった。
毎年、秋になると大雨のため川が氾濫し、
村では田畑が流され死者がでるなど大きな被害を受けていた。

そんな村に弥平と千代という貧しいながらも
仲の良い父娘が暮らしていた。

千代は手毬が好きな娘で、
いつも家の外で手毬をついていた。

ある日、千代が病にかかり寝込んでしまう。
弥平の家は貧乏なため医者に診てもらうことができない。

「おっ父、おら手毬がつきたい。
 また元気になれるかな」

そんな娘を弥平は看病しながら、
粟粥を食べさせようとする。
しかし千代は首を振り、

「粥はいらねぇ。小豆まんまが食べたい」

と、まだ母親が生きている頃に一緒に食べた、
唯一、美味しかった思い出のある小豆まんまをねだる。

弥平は娘のために地主の倉に忍び込み、
ほんの一掴みの米と小豆を盗みだした。
そして小豆まんまをこしらえて食べさせたところ、
娘は日に日に元気になっていった。

動けるようになった千代は、
弥平が畑仕事に出掛けている間に、
外にでて大好きな手毬をついた。

「とんとんとん
 おら家じゃ おいしいまんま食べた
 小豆の入った小豆まんま
 とんとんとん」

やがて村に秋が訪れ、
例年のように大雨の日が続くようになる。
犀川の氾濫を心配した村人達が
村長のもとに集まり会合をおこなった。

「川の氾濫を止めるには人柱しかねぇ」

村人の一人がそう叫んだ。

「しかし人柱になるのは咎人と決まっている」

もう一人の村人がつぶやく。

「いや、この村にも咎人が一人おる」

偶然、千代の手毬唄を聞いていた村人が、
その唄の内容をみんなに話した。

その夜、大勢の役人たちが弥平の家に押し入った。

「弥平、地主の倉から米と小豆を盗んだであろう。
 娘が歌っていた唄がその証拠じゃ!」

盗人としてひったてられる弥平。

「おっ父・・・」

不安そうにつぶやく娘に弥平は、

「心配するな。おっ父はじきに戻ってくる」

と娘を安心させようと笑顔で答える。
しかし、それが二人にとって最後の会話となった。

弥平はそのまま人柱として、
生きたまま犀川の土手に埋められた。

一人残された千代は何日も、
父親が埋められた場所で泣き続けた。
そして、泣き止んだあとは一切、
物を言わくなってしまった。

何年かの月日が流れ、
千代も大きくなったが喋ることはなかった。
そんな千代の姿をみかけることも少なくなったある日のこと。

村の猟師が雉を撃つため山に入った。
上空で雉の鳴き声が聴こえ、
すかさず猟師は雉を撃ち落す。

雉が落ちた場所に猟師が近づくと、
そこには死んだ雉を抱いた千代が立っていた。

「雉よ、お前も鳴かずば
 撃たれまいものを」

そうつぶやく千代をみて、

「おめぇ、口がきけただか!?」

と驚く猟師。

そしてそれ以後、千代をみた村人はいない。
しかし、この千代が残した最後の言葉だけは、
いつまでも村人の間で悲しく語り継がれた。


口は災いの元

それを伝えるための話にしては、
なんとも救われなさすぎる・・・。

いくつか諸説があるものの、
この話のもとになったと思われるのが「長柄の人柱」伝説。

飛鳥時代、大阪の淀川に架かっていた長柄橋。
(今の長柄橋ではなく、当時は吹田市と大阪市東三国の間に架かっていたらしい)
この長柄橋の建設が困難を極め、完成させることが出来ない。
そこで一人の長者が「袴に継ぎのある者を人柱に」と言ったところ、
なんとその長者の袴が継ぎがあったため人柱にされてしまう。
その長者の娘が射止められる雉をみて詠んだという和歌が今も伝えられている。

 物言じ 父は長柄の橋柱
 鳴ずば雉子も 射られざらまし

昔、大阪ではこの話を子供に聞かせ、
「せやからいらんことは言いなや」
と教えたそうな。


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コメント

この話はおぼえてます。
「おらんちじゃおいしいあずきまんま食べた♪」
って歌ってた記憶がありますが、
ちょっと違っておぼえたんですねえ。

投稿: たが | 2009/06/24 06:45

大きな声では言えませんが(?)、最近、某有名動画サイトでこの話を見直しました。
「おらえじゃ、おいしい・・・」と歌っています。

他にも自分が子供の頃にみて印象深かった話として、
「亡者の通り道」「亡者道」「とうせん坊」などがありますね。

投稿: ぽうせ | 2009/06/24 06:53

実際には盗んでいないけど、歌によって疑いをかけられ、
父親が娘の腹を割って、無実を証明するというパターンも
あるようですね。
中から出てきたのは、ただの稗だったと。

「まんが日本昔ばなし」の中では、私も印象に残っている一編です。
あと、猫岳のネコがひしゃくで湯をかけてくる話が怖かったです…。

投稿: ライデン | 2009/06/29 00:01

お城の石垣に人柱になる話は知っていますが、
お腹を割るバージョンは初耳ですね~。

同じ題材でも地方によって、
様々なバージョンがあるのが、
民話の面白いところです。

投稿: ぽうせ | 2009/06/30 21:30

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