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「風の谷のナウシカ」

宮崎駿アニメで一番すきな作品は?

と聞かれれば「トトロ」、「千と千尋」、「ラピュタ」など、
人それぞれだろうが、自分の場合は「風の谷のナウシカ」。
(なお2位は「未来少年コナン」)

映画館ではみたことがなく、
TV放送時にビデオで録画し、
それを何度も繰り返して観た。

スケール感、ワクワクする音楽、感動的ストーリー・・・
いろんな要素がとにかく良く出来ていた。

そんな映画の「ナウシカ」が面白かったので、
原作であるマンガ版「ナウシカ」(全7巻)を読んでみてビックリ。
あのスケールの大きいと思っていた映画版が、
マンガ版でのプロローグ部分をコンパクトにまとめたものだったとは!

~マンガ版 表紙裏にある説明~ ユーラシア大陸の西のはずれに発生した産業文明は、 数百年のうちに全世界に広まり、巨大産業社会を形成するに至った。 大地の富をうばいとり大気をけがし生命体をも意のままに造り変える巨大産業文明は、 1000年後に絶頂期に達しやがて急激な衰退をむかえることになった。 「火の7日間」と呼ばれる戦争によって都市群は有毒物質をまき散らして崩壊し、 複雑高度化した技術体系は失われ地表のほとんどは不毛の地と化したのである。 その後産業文明は再建されることなく、永いたそがれの時代を人類は生きていくことになった。

映画版とマンガ版とでは、ある意味おなじ作品であり、まったく違う作品といえる。

マンガ版の前半は作者の「架空の世界を舞台にした、
まったく新しい冒険物語を!」的な思いが反映されていて、
絵柄も明るく作者が楽しみながら描いている印象があった。
当時、話題になっていた環境問題も取り入れられていたが、
「青き衣の者」が現れて人々を救ってくれるだろうと、
楽観的な未来を予感させるものだった。
そういう意味でこの前半部分は映画版と、
舞台設定が多少違うが雰囲気がよく似ている。

それがマンが版の後半では、
作者の死生観、宗教観といったディープな内面が反映されるようになり、
物語はどんどん救いのない展開になっていく。

主な映画版とマンガ版との相違点は以下のような感じ。

・映画版にはトルメキアと敵対する土鬼(ドルク)諸侯連合が登場せず。
・マンガ版では戦争シーンがかなりリアルに描かれている。
・巨神兵が映画では旧世界の怪物、マンガ版では裁定者に。
・腐海の存在する意味。映画版でもそれらしい説明があるが、
 マンガ版では、それよりもさらに深い意味が・・・。
・マンガ版でのナウシカの性格が、
 最初こそ映画版とほぼ同じだが、
 物語がすすむにつれかなり変化していく。
 これを主人公の成長と呼ぶには、とても痛々しい。

マンガ版は総ページ数はそれほどでもないのに、
恐ろしく密度が濃い内容となっている。
原作を購入したのはずいぶん前だが、
いまでも時々読み返す。
それくらい原作は印象深い作品だけど、
まったく不満がないわけではない。

ラストのほうがちょっと強引に完結させた感がある。
どこかで切らないといつまでも終われない、
という作者の都合もわからないではないが、
蟲、蟲使い、巨神兵など人々から忌み嫌われる存在を
分け隔てることなく愛しんだナウシカの、
クライマックスでの行動がどうも結びつかない。
ナウシカは風の神さまを信仰していることになっているが、
その行動は終始、多神教的でありアニミズム的であった。
しかし世界の黒幕である墓所の主と対峙したとき、
ナウシカは自らの思想を絶対的なものとし、
相手の全てを否定してしまう。
これでは宗教戦争を引き起こす立役者たちと変わらない。

ナウシカの言う生き方と、
墓所の主らが用意した未来、
どちらを選択するかは、その時代の人々なり生命の循環そのものに
選ばせるほうが良かったのでは。

「救世主」でもない一人の人間にとっては、あまりにも重すぎる決定だ。
そういう意味でやはりラストは急ぎすぎたと思う。

とはいってもマンガ版「ナウシカ」は、
自分の今まで読んだ印象深いマンガのベスト5に入る。

関連記事-「虫愛づる姫君」

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コメント

優れた作品(映画)であるとは思うのですが、何故か私はあまり好きではありません。
どこが気に入らないのか、と考えるのですが、よく分からないでいます。
映画の出来として完璧すぎるのか、主人公が優等生すぎるのか、いずれにせよ、自分の性格の曲がりによるものだとは思っているのですが…。
「カリオストロの城」や「トトロ」は好きなんですけどねえ。

原作はいつかは読もうと思いながら、版が大きいのと、いまさら感が強いため、購入をためらってしまいます。

投稿: ライデン | 2008/07/26 23:42

原作ではそんなライデンさんの代わりに、
「とんでもないカマトト」
「虫唾が走る。神がかりの青二才の小娘」
と、ナウシカが罵倒されてました^^。

ナウシカも自分の手が血まみれであることを自覚しており、
何度も虚無に襲われます。
映画ではそういう葛藤がないまま、
「めでたしめでたし」で終わってますからね。

原作ラストは賛否両論ありますが、
かなり読み応えはありますよ。

よければ「でんでん虫」に行ったときにでも、
原作をお貸ししますが。

投稿: ぽうせ | 2008/07/27 03:02

>よければ「でんでん虫」に行ったときにでも、
>原作をお貸ししますが。

ありがとうございます!
ぜひお願いいたします。

ちなみに「でんでん虫」には今週の土曜日におじゃまする
ことになっておりますが、そちらのご都合の良いときにでも
お預け頂くことも可能かと。

投稿: ライデン | 2008/07/27 21:14

土曜日はちょっと伺うのが難しいですが、
それまでに「でんでん虫」に預けておきますね。
ちょうどでんでん虫(弟)さんに、
(名探偵ではないほうの)「コナン」のビデオをお貸しする予定もありますので。

投稿: ぽうせ | 2008/07/27 23:02

ありがとうございます。
よろしくお願いします。

ところで、コナンのビデオって劇場版ですか?
あれは編集がアレでしたよね…。

投稿: ライデン | 2008/07/27 23:18

TVシリーズのほうです。
弟さんが最近、再放送にはまっているそうで、
何話か見逃したのがくやしいとのことで、
そういう話になりました。

宮崎駿が「カリオストロの城」製作のため劇場版にはノータッチだったそうです。
肝心の部分がバッサリ削られていた記憶があります。

TVシリーズ「コナン」=マンガ版ナウシカ
劇場版「コナン」=劇場版「ナウシカ」

少し構図が似ているかも。
下の2作は完成度の点で雲泥の差がありますが。

投稿: ぽうせ | 2008/07/27 23:56

「コナン」劇場版ではギガントが飛ばずに終わるんですよね。
ラオ博士も死なず、世界を見てくるとか言って旅に出てハッピーエンドだったかと。

それが、後に公開された劇場版2作目は本来の最終エピソードを単純に繋げた
ものだったので、NHK-BSで2本続けて見たときにはストーリーがちゃんと繋がって
いなかった記憶があります。

投稿: ライデン | 2008/07/28 12:40

タイトル「ギガントの復活」でしたね。
偶然か意図的にか映画「ナウシカ」と公開日が同じだったとか。

投稿: ぽうせ | 2008/07/29 02:04

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