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夜鷹③

甘い木の実

「ああ退屈だな」
 ヒヨドリは大きなあくびをした。そばにいたツグミも同じようにあくびをする。
「でも、昨日は驚いたね。タカがあんな近くにいたなんて」
 ツグミがそう言うと、ヒヨドリは苦い気持になった。あのときは大丈夫だったが、いつあのするどい爪に捕らえられるかわかったものではない。恐らく、一生あの爪に怯えて暮らさなければならない。
 苦い気持になったのはもうひとつ理由があった。あのとき自分もツグミも怯えて震えていた。だがヨタカの奴はまるで怯えた様子もなく平然としていた。
(きっとあいつは、自分たちを心の底で笑っていたに違いない)
 そう思うとヒヨドリはくやしくて仕方がなかった。
「たしかウグイスの奴、ヨタカと仲が良かったよな」
 ヒヨドリはそうつぶやくと、なにやら考え込み、そしてツグミにその考えを話した。それを聞いたツグミは面白そうに笑みを浮かべた。

「まあ食べてくれよ」
 ヒヨドリは笑顔を浮かべ優しく言った。
 ウグイスは差し出された木の実を疑わしげに眺めていた。
「どうした、遠慮はいらないよ。この木の実は僕だけの秘密の場所にあってね。山葡萄や柿の実なんかよりも、ずっとおいしいよ」
「どうして、そんな実を僕にくれるんだい」
 ウグイスはよく餌を横取りされる。目の前のヒヨドリもその横取りする1羽だった。
「君にひどいことをしていたと反省したんだよ。その罪滅ぼしさ。さあどうか食べておくれ。これから仲良くやっていこう」
 ウグイスは一口その実をつまんだ。すると、いままで食べたどの木の実よりも甘く、香ばしく、おいしかった。たまらずウグイスは、その木の実をきれいに食べ尽くした。
「ああ、とてもおいしかったよ。ありがとう!」
「いやいや、どういたしまして。ところで・・・」
 ヒヨドリは急に声の調子を落とした。
「君の友人として忠告するけど、あのヨタカには近づかないほうがいいよ」
「えっ」
 ヒヨドリは真剣な表情で続けた。
「君がなぜ他の鳥たちにいじわるをされるかわかるかい?いつもヨタカと一緒にいるせいさ!あいつのせいで鳥全体のイメージが悪くなるって、僕ら鳥仲間はとても迷惑しているんだ。そこでだ。近々ヨタカをこの森から追い出す決まりができたんだ。だから、ヨタカと一緒にいると君も同類とみられて森を追いだされるぞ」
「そんな・・・」
 ウグイスはどうして良いのかわからずオロオロした。
「悩む事はないさ。あんなみにくい鳥のために君まで巻き込まれることはないさ。君だってヨタカをみにくい鳥だと思うだろう」
「それは、みにくいとは思うけど・・・」
 小さくウグイスがつぶやくと、ヒヨドリは大声で叫んだ。
「君もみにくいと言ったな!聞いたかい、みにくい鳥さん。誰もお前をまともな鳥なんて思っちゃいないよ!」
 少し離れた茂みから1羽の鳥が飛び去っていった。それはヨタカだった。遅れて茂みからツグミが現われた。
「へん、ヨタカのヤツ、べそをかいて逃げていったよ」
「どういうことだよ」
 ウグイスは泣きそうな声で言った。
「なに、自分のことをよく知ってもらおうと、ヨタカをおびき出しておいたのさ」
「決まりって・・・いうのは・・・」
「ハハッ。ウソさ!でも、そのうちそんな決まりが出来るだろうよ」
「こんなに上手くいくなんて。あー面白かった!!」
 自分たちの思い通りの結果になりヒヨドリたちは大笑いしながらその場を去った。
 あとに残されたウグイスは、呆然と立ち尽くすしかなかった。

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