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夜鷹⑥

羽ばたく翼

 ヨタカが目を覚ますと、雲ひとつない満天の星空が広がっていた。嵐が過ぎ去り、どこかで虫の鳴き声が聞こえる。
 体についた雨粒をはじき飛ばすと、ヨタカは夜空に舞い上がった。月の光を浴び体を銀色に輝かせながらヨタカは飛んだ。自分の住む森に向かって。

 一夜が明けヨタカはウグイスの姿を探した。ウグイスに僕は気にしていないって言ってやろう。
 水たまりで水を飲むウグイスをみつけた。そこへ近づこうしたとき、ヨタカは上空を旋回するタカの姿をみた。そしてタカはウグイスめがけて急降下をはじめた。

 自分を呼ぶ声がしてウグイスは上を見上げた。そこにはタカがヨタカの体を捕らえる姿があった。タカの爪はくっきりとヨタカの心臓に突き刺さっている。ヨタカは口から血を溢れさせ、遠のく意識の中ですぐ近くにあるタカの顔をみた。タカは深い瞳でヨタカをみつめていた。タカの口がなにかを喋ったようにみえたが、もうヨタカの耳には聞こえなかった。

 森の中を飛んでいたウグイスは一休みをしようと木に枝に止まった。
 ここ何日もウグイスの心は重かった。何をするときもあのときの光景が目に焼きついて離れない。
 下のほうで声がするので見渡してみると、ヨタカの親子がいた。母鳥がヒナに飛び方を教えているのだ。ヒナは不器用に羽根をばたつかせている。
(あのヒナも、やがてみにくい鳥って言われるのかな)
 ウグイスがそんなことを考えているあいだも、母鳥は一生懸命ヒナを励ましている。ヒナもなんとか飛ぼうと地面を這いずり廻る。いつしかウグイスもヒナを応援していた。
「大丈夫。飛べるよ。もっと羽ばたくんだ」
 ついにヒナの体がふわった浮かんだ。
 母鳥が歓声をあげる。
 ヒナはとまどいながらも、うれしそうに自分の力で空を飛んでいった。

(おしまい)


 

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コメント

子どもの頃、宮沢賢治の作品の中で「ヨタカの星」が一番好きでした。
今思うと、いやな子どもだなぁと思います^^;

投稿: ヒロ子 | 2006/01/24 18:57

賢治の作品のなかでも一際、暗い作品ですからね~。
このブログの話は10年ほど前に、とあるサークルの会報に載せたものです。
「よだかの星」、とても好きな話なんですが、ラストがどうも納得いかなくて・・・。「死んで星になれば、それでよだかは救われるのか!」と。その頃、社会問題になっていた「いじめ」もオーバーラップしています。
本当はヨタカが森に帰るところで終わるハッピーエンドでも良かったんですけどねぇ。「いや、自分が変わったくらいで、世の中が変わるわけではない」という葛藤の末、結局ああいうラストになりました。
自分も嫌な性格です・・・^^。

投稿: ぽうせ | 2006/01/24 23:06

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