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夜鷹⑤

ヨタカの星

 なにも見えず真っ暗な闇だけが広がっていた。自分は立っているのか、宙を漂っているのか、どこが上で下のかさえわからない。ただ意識だけがあった。
(ぼくはどうなってしまったんだろう)
 ヨタカは考えようとしたが、頭がぼんやりして集中できない。
 すると闇のなかからヒヨドリとツグミが現われた。ヒヨドリたちはなにやら探していた。しかし、それを見つけることが出来ず、ヒヨドリはツグミを乱暴につつきだした。ツグミは悲鳴をあげて闇へと消えいき、ヒヨドリもなにか喚きながら闇に消えた。
 今度はウグイスが現われた。ウグイスはしゃくりをあげ泣いていた。ヨタカは可哀相に思い、ウグイスに声をかけようとしたが声がでない。ウグイスはとぼとぼ歩き出し、消えていった。
 ヨタカはだんだん恐くなってきた。ここから逃れようと意識を四方八方に向けると、遠くに小さな光をみつけた。ヨタカはその光に近づき、そして尋ねてみた。
「ここはどこなの」
(どこでもない。ここはお前の中にある)
 声が頭に響いた。
「あなたは誰」
(お前の憧れるもの。夜に輝く星)
「ヨタカの星・・・」
(ヨタカよ。お前は今まで辛い思いばかりしてきた。私のところに来るがいい。私とともに星になるがいい。ここには苦しみも悲しみもない。お前をみにくいと言う者もいない。逆に多くの者が、美しい星としてお前のことを見上げるだろう)
 ヨタカの星は光をゆるめかせながら青白く燃えていた。すぐ近くにあっても、熱くも冷たくもない。静かで、そして恐ろしいほどに美しかった。
 こんな姿になれるなら星になってもかまわない。
 もうあんな思いはしたくない。
 僕を星にして!そう言葉にしようとしたとき、いつかのウグイスの言葉がよみがえった。
(それが本当の望みだったのかな)

 ヨタカのなかで疑問が生まれた。
「あなたはこの闇のなかで、とてもきれいに輝いている。でも、それはあなたにとってどんな価値があるの」
 しばらくの沈黙のあと、ヨタカの星が答えた。
(私自身には価値はない。誰かが私をきれいだと思うとき、お前のように必要とする者がいるとき、はじめて存在する価値を持つ)
 ヨタカはこの星もやはり自分と同じなのだと思った。みにくい姿がいやだ。どこか遠くへ行ってしまいたい。そんな想いが生み出したんだ。
(さあ、おいで。星になることはお前の望みだったのだろう)
「きれいに思われたいから星になるなんて嫌だ!」
 ヨタカは力の限り叫んだ。
「僕は誰かのものじゃあない。僕は僕のために生きたい!!」
 星がはじけた。まるで太陽のような熱い光がヨタカを包み込み、ヨタカの意識はその光のなかに溶けていった。


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