« 夜鷹② | トップページ | 映画「男たちの大和」 »

夜鷹①

みにくい鳥

 どこにでもある、ありふれた森があった。 
 その木陰の下を1羽のヨタカが散歩していた。
(お腹が空いたな。でも夕暮れにはまだ早いなあ)
そんなことを考えていると、ヨタカは草に足をひっかけつまづいてしまった。
「あ痛!」
 うしろのほうで笑い声がした。
 ヨタカが振り返ると、ヒヨドリとツグミが笑い転げていた。
「アハハ・・・、なんて間抜けな姿だろう」
「姿が間抜けだと、転び方まで間抜けだな」
 ヨタカは何も言わず再び歩き出す。
 ヒヨドリたちは笑うのをやめて、ヨタカのあとを追う。
「おい待てよ。あいさつくらいしたらどうだ」
 横柄にヒヨドリが言った。
「僕になにか用かい」
 ヨタカが答えると、ヒヨドリたちはまたさっきと同じ笑みを浮かべ、ヨタカの前に回り込んだ。
 「別に用なんてないさ。ただ君みたいなみにくい鳥が、よくこんな真っ昼間からうろつけるもんだと感心したもんでね」
 「いや、もしかしたら恥ずかしいなんて、高等な感情がないのかも知れないね」
 ヨタカが黙っていると、ヒヨドリたちはますます調子づいて続ける。
「大体君がどうしてヨタカなんて偉そうな名前をしているのか理解に苦しむよ」
「僕がタカだったら、こんなのと一緒にされるなんて我慢できないや。真っ先に食い殺しているよ!」
「君たちには関係ないだろう」
 ヨタカが言い返すと、ヒヨドリたちから笑みが消え、
「関係ないとはなんだ!この鳥の面汚し!」
「お前なんて姿の見えない夜にだけうろついていればいいんだよ!」
と、大声でヨタカを罵りはじめた。

 突如、上空で鋭い鳴き声がした。

 驚いたヒヨドリたちが空を見上げると、背の高い木の枝に1羽の立派なタカの姿があった。猛禽類の証である何者をも引き裂く鋭いくちばしと爪、そして周囲を威圧するするどい眼を持ち、森の王者らしい風格が漂っていた。タカはヨタカらに気づいているのかいないのか、じっと遠くをみつめている。
 ヒヨドリとツグミは喋ることも逃げ出すこともできず、ガタガタと震えていた。ヨタカのほうは同じ名前をもつタカの姿を、目を見開き瞬きもせずに見上げている。
 タカは大きく翼を広げると、ゆっくりその場から飛び去っていった。

|

« 夜鷹② | トップページ | 映画「男たちの大和」 »

夜鷹」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/65730/8068074

この記事へのトラックバック一覧です: 夜鷹①:

« 夜鷹② | トップページ | 映画「男たちの大和」 »